
家を出てすぐに撮った雲の写真がカメラロールに入っている。昼飯を食べた帰り道、インスタグラムにアップしようと「夏い。従って、昼食はベトナム料理。」という説明を添えているときに、どこで何を食べるかを決定するのは外の空気で、出てみないと分からないとわかる。旅行は行き先と宿とメインの移動手段が決まっていればいい。そういうこと。帰り道になってもカメラロールの雲はまだ同じようなところにあったが、少し風が出てきていて、そこまで夏ではなかったし、入道雲は夏の終わりのイメージがある。
昨日と同じ商店街に向かって、同じドンキの前を歩きながら、あまりに昨日と同じなので少し見回すと、ドンキの向かい側、新しくマンションが建築される側の街灯の上に茶色いシャチホコがついていることに気付く。50メートルはくらいの間にいくつかある街灯の上、全てにシャチホコ。結構、しっかりと付いてる。今まで気付かなかった。多分、街の誰も気付いていないシャチホコ。こういうのがいいんだよ、と脳内で天竜川ナコンがいう。マンションができたらなくなるだろうから、なくなる前に誰かに教えようと思う。
ベトナム料理屋。2人掛けのテーブル。席についてウエストポーチを反対側の椅子、テーブルで見えない座面にそこに座面があるだろうと予想して置く。色々とメニューを巡って、久しぶりにシンプルな方向性にする。牛肉のフォー、しかもランチセット。ドリンクはペプシコーラを選択。オレンジ色のカートに追加ボタンを押してカートに追加、そしてカート画面から注文を送信。店のレジ付近の端末が鳴る。
フォーはすぐ出てくる。店にはサラリーマン2組の先客のみ。犬の話をずっとしているから、もう食べ終わっているんだろう。2ページも読み進まぬ間にトレーが運ばれてきた。割り箸を割るために一旦、本を置く。左側に本を置くスペースを確保するため、トレーを少し右にずらしたら、右手の甲でテーブルに据えられているメニュー置き(メニューを挟んで置くやつ)をノックした。メニュー置きにはプレモルのポップが貼られていて、ビールが注がれたグラスの写真をノックした。
ちょっと前から、店内にたくさん貼られている3センチくらいのベトナム国旗のシール。シャチホコに気付いたことで感受性が高まったのか、国旗の一枚が上下逆さまに貼られていることに気付いた。サラリーマン2人は犬の話から道路の冠水の話に夢中で、逆さまの国旗には気付いていないだろう。私は見つけてはいけないものを見つけたような気がした。